日曜の昼下がり、なんともなしにネットで遊んでいると、男心をくすぐるエロサイトを発見した。
「こんな天気のいい日は、どっか散歩でも行ってくれば」
普段はかけないような言葉を、妻とヒロタカにふってみる。
「とりあえず、お前らどっかに消えてくれ!」とは、さすがに言えない。
しかし、ヒロタカにそんな素振りはなく、テレビゲームに夢中で、妻はたまった洗濯ものを片付けている。
しかたがない。
なんとか家族の目を盗みつつ、画面に映し出された痴態に興じいる。
もはや視線はパソコンに釘付けだ……。
どれほど周囲に気を配っているつもりでも、食べているときと、エロサイトを見ているとき、人間は無防備になるらしい。
気が付けば、背後にヒロタカが立っていた。
「たいへん!たいへん!お父ちゃんが、ヘンなもの見てるよ」
もはや、言い訳する暇も与えられず、ヒロタカはひたすら大騒ぎ。
まるで鬼の首でも取ったようなはしゃぎようだ。
まだ小学生とはいえ男同士、なんだか裏切られた気分になる。
慌てて、ウインドウを閉じようにも、こんなときに限って反応が遅い。
妻から軽蔑の眼差しをおくられ、エロオヤジの称号を頂くはめになった。
ヒロタカも小学5年生になって、そろそろ芽生えの年頃である。
公開初日に、妻とヒロタカがマトリックスを見に行ったのだが、ヒロタカ曰く、
「エロっちくて見てられないよ」とのことだった。
ヒロタカにとっては、アクションシーンよりも、ラブシーンのほうが刺激的だったのかも知れない。
オレが小学高学年の頃はどうであったか。
これは間違いなく、男どもより女子のほうが確実にませていた。
とある掃除の時間、クラスメートの女子にこんな質問をされた。
「まさひと、コンドームって知ってる?」
彼女は、にやにやと笑っていた。
「……知らない。なにそれ?」
「ふふ、男の子はね。いつかは絶対に使うものなんだよ」
「えっ、それなに。教えてよ」
彼女は、「教えてあげない!」と、笑いながら走り去っていった。
今思えば、「お前は、ほんとうに小学生か!」と突っ込みたくなるところだが、小学生にもなれば男と女は、なにがどうなって、あーなって、そうなるかぐらい知っている奴もいるのだ。
修学旅行にコバルト文庫 ─初体験シリーズ─ を持ち込んで、先生に見つかり怒られていたのも、そいつだった。
オレはといえば奥手だった。
当時、A・B・Cという隠語が流行っていた。
「あたし、Bまでいっちゃった」
「うっそー。あたしは、まだAまでよ」
「ぶりっこなんだからー。ほんとはCまでいってるんじゃない」
A=キス
B=タッチ
C=そのものズバリ
その頃、アイドルの沖田浩之が「E気持ち」という歌をヒットさせていた。
「♪A・B・C、A・B・C、ハ〜ッン、E気持ち〜〜」ってな歌だった。
今思えば、SEX狂の歌である。
奥手なオレは、Cがなんだかわからない。
中学一年生になり、サッカー部に入った。そこで先輩が自己紹介でいった。
「オレの名前は、マスター=ベーションです」
先輩部員は爆笑しているが、オレにはなんのギャグなのかさっぱり理解できない。
どこかのお店のマスターなのかなと思っていた。
知識や言葉は知らなくても、中学生にもなれば体の変化に気付いてくるものだ。
ここから先は、オレのパンツの穴。
恥ずかしい話しだけど、興味のある人だけどうぞ。
ある日、風呂に入ってちんちんを洗っていると、いつのまにか大きくなっていることに気が付いた。
小さい頃から、ちんちんは、ときどき大きくなることは、経験で知っていた。
それまでは、そのことにさしたる興味を抱かなかった。
面白いなと思っていたぐらいだ。
中学生、思春期になって探究心が生まれた。
風呂に入ると、ちんちんをいじってみた。
すると、小さいちんちんが大きくなるではないか…。
これは、なんだろうと思った。
これが最初の芽生えだった。
当時、小林よしのりが少年ジャンプで東大一直線を連載していた。
オレは、このマンガの大ファンで、その関連本も購入していた。
ワニの豆本。
文庫本より小さくて、少し分厚く、隠し持つには丁度いいサイズ。
思春期の中高生をターゲットにしたシリーズで、Hなネタも有ったし、深夜ラジオの投稿ネタが一冊の本になった。
文化放送のセイ!ヤング、谷村新司とバンバンの人気コーナー『天才、秀才、バカ』(三段落ちの王道)もワニの豆本で発売されていた。
ラジオを聞いたこともないのに、イトコの家でコタツに入りながら笑いながら読んでいたのを今でも覚えている。
そんな、オレが持っていたワニの豆本の一冊に、東大一直線の主人公、東大通が様々なノウハウをハウツーする本があった。
ちょっとHな企画もあった。
家族が誰もいないときである。
オレは、そのハウツーのいくつかを実践してみたのだった。
東大通が語る。
「冷凍庫でサランラップを氷らせて、ちんちんに張り付ける。それをゆっくりはがすと気持ちいい」
発想としては、マンガそのものだ。
それを実行したオレは、当時はマンガレベルの思考と行動力を持っていたのだろう。
気持ちよくもなんともなかった。
東大通が語る。
「おろし金で、キンタマをこすると、刺激があって気持ちいい」
さすがに、分別があった。これは却下である。
東大通が語る。
「ちんちんを、掃除機の穴に突っ込んで、スイッチを入れてみろ。そこしれぬ快感が押し寄せてくる」
これは実行した。
掃除機の口をはずし、円筒形の筒にちんちんを差し込んだ。
※ 良い子のみんなは真似しないでね。
最初は、なんてこともなかったのだが…。
しばらくすると、バキュームされたちんちんに、微妙な振動が加わり、みるまに大きくなっていく。
「おしっこがでちゃう!」
そう思った。
慌ててトイレに駆け込むと、尿道からは白い液体が流れ出したのだ。
オレは病気かと思った。
慌てて中一時代のバックナンバーを引っ張りだして、性の悩み相談を読みあさった。
オレと同じ悩みをもっている女の子がいた。
「あー、これはオリモノなんだ」と納得した。
それほど、無知だったのである。
息子もそろそろ、性の芽生えが始まる年頃である。
頭では理解できなくても、体は勝手に成長していく。
かわいい、かわいいだけで過ごせた関係も、これから難しくなっていく。
今まさに、我が家に、汗臭い男が、もう一人増えようとしている。