オレの最終学歴は、工業高校卒である。
工業高校卒というと、ネタとしては馬鹿の代名詞みたいに思われるが、そんなことは決してない。
普通高校では得られない、特殊な技能を身に付けることができるのだ。
例えば、オレは高校時代に各種資格免許を取得した。
まずは、危険物取扱者丙種である。
これを持っていれば、ガソリンや灯油を取扱うことが可能だ。
軽トラックの頭に、黄色の文字で「危」とかかれた、灯油売りのトラックだって運転することができる。
そして、電気工事士免許も持っている。
これさえあれば、一般家庭の屋内配線工事を行う資格が得られるのだ。
平たく言えば、我が家のコンセントを増やしたいと思えば、壁の内側にある配線をいじって、壁にコンセントを増設することだって可能だ。
実際、高校時代に、「オレの家は部屋中コンセントがある!」と豪語している先生がいた。
工業高校では、正式には教師ではなく講師としての肩書きを持つ先生がいた。
とはいえ、学生にとっては、そんな肩書きは関係なく、講師であっても先生は先生であった。
ある時に、電気関係の先生がこんなことを言いだした。
「寺井先生は、自分のことを先生と呼んでる。だけど、オレはオレのことをオレと呼んでる。この違いがわかるか」
つまり、一人称として「先生は、間違ったことが嫌いだ!」と語りかけるか、「オレは、間違ったことが嫌いだ!」と語るかの違いである。
その先生が言うには、「オレは、教師ではない。単なる講師である」ということだった。
この時に始めて、工業高校の中には、正式な教師と技術系を教える講師がいるのだと、オレは知ったのだ。
この、肩書きとしては講師である先生には、ユニークな人が多かった。
ある期末試験の問題である。
そのテスト用紙には、設問が二つしかない。
まず一問目には、虚数を使った複雑な公式を駆使しなければ解けない問題。
そして二問目は、下記の配線図にある通り、10V(ボルト)の電圧で、5Ω(オーム)の抵抗があります。電流の値を求めなさいとの設問だった。

これは、中学生の理科の問題である。
配点は、共に50点だった。
その頃は30点以下で、赤点となって追試だったから、このテストには誰もが涙して喜んだ。
なんて学生思いの先生なんだ!
簡単に解説すると、10Vの電圧は、電池だと思って欲しい。そして5Ωの抵抗は、豆電球である。
つまり、この豆電球に何アンペア電気が流れるかという問題だ。
これは、中学で習った公式で解答を得ることができる。
I=E/R I(A)=値である電流 E(V)=電圧 R(Ω)=抵抗
つまり、10ボルト割る5オームである。
ちょー簡単。解答は、2A(アンペア)である。
これで、この期末試験は、追試なしで免れたと思っていた。
ところが…。
戻って来た答案用紙を見たら「0点」。
これには、クラスの中から大きなブーイングが起こった。
この解答が2A(アンペア)でなければ、なんだというのか!
すると、その講師先生は嬉しそうに、問題用紙を持ってこういった。
ここを、良く見ろ!

ここの配線が途切れてるだろ、これでは電流は流れないから、よって「0アンペア」が正解だ!
誰が、期末試験の問題で謎ときをしろって言ったのか!
「それは、ないよ〜」と、クラス全員が追試となったのであった。
その先生は「うっしっし」と笑いながら教室を後にしたが、きっと、毎年こんな問題を出してるのであろう。
オレは、先生というものが大嫌いであったが、こんなことがあって、少しは先生を見直した。
校長先生が、生徒の人気とりで、その場を盛り上げようと「ド〜は、ドクロのド〜」と唄ってニュースになった。
けしからん!と、保護者からの苦情があったらしい。
確かに、馬鹿な工業高校らしいエピソードかも知れないが、工業高校には教師ではない、おもろい先生もいたことは確かだった。